この記事で作成した3次元翼コンポーネントを使って航空力学の書に登場する有名なDrag-vs.-airspeed曲線を作成する。
 車や自転車は速度が大きくなるほどdrag(抗力)も応じて大きくなる。しかし、飛行機(翼)というのは不思議なもので、水平・無加速飛行で発生する抗力が、速度がとある速度を下回ると、逆に大きくなる。縦軸にdrag・横軸に飛行速度を取って可視化すると、下図のような形になる。
*これはdragに大きく2種類、摩擦抵抗による"parasite drag"と揚力の一部が速度ベクトルと逆向きに働くことによる"induced drag"があり、それぞれの速度に対する動きが逆なため。本記事では航空力学の詳しい解説を省略するので、詳しく知りたい人は専門書をご覧下さい。
thrust required curve
Drag-vs.-airspeed
出展:Aircraft Dynamics From Modeling to Simulation Edition 1, by Marcello Napolitano, Figure 5.9
*↑図中の表記、"Parasite drag"と"Induced drag"が逆。parasite dragの主成分は摩擦抵抗なのだから、airspeedが大きくなるほど大きくなる筈。

drag-vs.-airspeed曲線を描くためのモデルが以下。
wing_variousV
モデル全体の大まかな機能は以下。
  • 発生揚力を一定値に固定。
  • 飛行マッハ数(=飛行速度)を任意の値に設定。
  • 翼の仰角を、飛行速度と揚力設定値に応じて出た成りとなるようにする。
Inputとして、飛行マッハ数を下図のように変化させる。
wing_03
この間、翼の揚力は固定している。
wing_04
飛行マッハ数を下げたのに応じて、翼の迎角が増加する。
wing_05
このときのdrag-vs.-airspeedの関係をplotすると下図のようになる。航空力学の書に描かれる曲線とよく似たものが出来ている。
Df_vs_V

さらに、parasite dragとinduced dragとairspeedの関係をplotすると下図の通り。
Df0_vs_V
DfInduced_vs_V
Parasite dragが飛行速度に伴って増加、induced dragが減少する。そして、2つの曲線が交差する速度がdragが最小となる。航空力学書に記載のグラフと同じ動き。

そして、翼のアスペクト比を変えてDrag-vs.-airspeed曲線の変化させたときの動きが下図の通り。
drag_vs_V_variousAR
大学時代に支配式で観た通り、ARが大きいほど、dragが最小となる飛行速度が小さく、drag自体の絶対値が小さくなる動きを作れている。飛行機の空力シミュレーションとパラスタに使えそうだ。

今回は、ここまで。

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