前回の記事で、ボリューム効果コンポーネントを入れた途端に計算が回らなくなったが、計算が回り、過渡シミュレーション実現への路が見えはじめた。

TurboJet001_006
Fig.1 system model skematic

 システムモデルの構成は前回の記事で用いたものと同じ。特性値設定も変えていない。
Turbojet001_006_02
Fig.2 command output of simulation 

 Initializationでコケることなく無事に計算が開始・完了する。
Turbojet001_006_01
Fig.3 delay of mass flow

 タービン出口質量流量と、1つ下流のダクト入口の質量流量。タービンとダクト間のボリュームに圧縮性の効果で質量が溜り、ごく僅かだが、ダクト入口質量流量の時間応答が、タービン出口質量流量の時間応答より遅れている。
 行った対処は、流体の状態に初期値を与える事。Modelicaのvariableは、start=...を指定しなければ自動で"0"で初期化されるが、これが求解を妨げていた模様。求解過程の値を吐き出させて分析した訳ではないから推測に過ぎないが、流体システムは非線形性が強いので、解空間に極値があったり、求解途中でソルバが吐き出すvariableが非現実的な値に飛んでしまっている可能性が有る。
 具体的な実装だが、各コンポーネントに、"Initialization Parameters"と名付けた初期化用パラメータを作り、fluidのportのm_flow, p, h_outflowと、内部にあるMediaインスタンスのp, T, hにInitialization parametersの値を代入している。Initialization parametersにはデフォルト値として、
 m_flow= 1 [kg/s]
 p= 101.3 *1000 [Pa]
 T= 288.15 [K]
 h= 1.004* 1000* T [J/kg]
を設定している。
initializationParameters
Fig.4 initializations of fluid states

 "Initialization parameters"の宣言部。
initializeFluidPorts
Fig.5 initializations of fluid states (2)
 
initializeInternalFluids
Fig.6 initializations of fluid states (3)

 Initialization parametersで宣言した初期値は、variablesの宣言部で、start文で代入している。
initializeParameterSettings
Fig.7 initializations of fluid states (3)
 
 上記の値では求解に失敗することも起きるだろうから、Parametersウィンドウで値を変更することも出来るように、annotaionセクションを記述してある。
 
 このように状況は良くなったが、実はまだ問題が完全に解決した訳ではない。Fig.1で示した以外の位置にボリュームコンポーネントを配置すると、未だに求解に失敗してしまうのだ。Fig.8の矢印で示すように、コンプレッサと燃焼器の後ろにボリュームコンポーネントを入れた状態で過渡シミュレーションが回る状態にするのが本当のゴールだ。
 TurboJet001_006_
Fig.8
 
 恐らく、現在、初期値を標準大気状態に設定しているために不完全なのではないかと思う。次の対処として、定常計算で総ての状態が平衡している計算結果を初期値に設定する。
 今回は、ここまで。

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文献紹介

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