1軸ターボジェットエンジンのシミュレーションモデルに、前回(こちら)の回転機械の慣性に続いて、ボリューム効果、=圧縮性による質量流量遅れ、を実装する。結論から言うと、表題の通り、ボリューム効果コンポーネントを追加しただけで計算が回らなくなるという事象に遭遇した。

TurboJet001_005
TurboJet001_006
Fig. 1 Turbojet001_005 -> _006
 上が回転機械の慣性を実装した段階、下がボリューム効果を追加してみたモデルスケマティック。ボリューム効果のコンポーネントはModelica Standard LibraryのFluid内に有るClosedVolumeをそのまま利用する。
 いきなり総てのコンポーネントとセットになるボリュームをすべて組み込むのは煩雑で時間が掛るので、タービン後ろ以外を端折った。動作確認が先。
 

 結果はと言うと、最初に述べた通り上手くいかない。initializationの段階で、累乗計算箇所で「Invalid root」が何回も表示され、その後に「Matrix Singular」が延々と繰り返されて計算失敗に終わる。
 コンパイルまでは成功しており、過拘束や不足拘束なシステムになっているということはない模様。未知数の数と必要方程式は必要なだけ揃えられている筈だ。しかし、計算結果が何一つ得られていない状態で落ちている上に、エラーメッセージも乏しいので、結構な難題になりそうと考えられる。

 一方で、Modelica Standard LibraryのVolume自体にバグがある訳でも、Volumeの使い方を誤っている訳でも、Modelica Standard LibraryのFluidコンポーネントとPropulsionSystem Libraryの接続の互換性が破綻している訳でもなさそうであることを確認している。
 以下に示す遥かにシンプルなモデルを2つ作って計算を試した結果からその様に判断した。
Volume001_001
Fig. 2 
 Volume単体をエンジン内と同じつなぎ方でSourceとOrificeに繋いで、Source圧力を時間変化させる。すると難なく計算完了し、定性的に正しい挙動を示す。(その結果は端折る。)Volumeコンポーネントの使い方は誤っていない模様。

Volume001_002
Fig. 3
 PropulsionSystemのコンポーネントとの接続。コンプレッサの後ろ・その下流のオリフィス(質量流量が圧力に応じて勝手に決まるようにするために配置)の間にボリュームを配置。圧力比を時間変化させる。やはり、無事に計算完了し、挙動が定性的に正しい。PropulsionSystem LibraryとFluid Library間の互換性の破綻の線も無い。

 となると、私の作成しているPropulsionSystem Library自体に未だ見えていないバグが有るか、VolumeとPropulsionSystemのコンポーネントの組み合わせで数値解が出なくなる計算上の現象が起きている可能性が高そうだ。正直、Invalid rootに関しては心当たりがあるので、先ずはそこから当たる。

不調報告となったが、今回は、ここまで。

---------------
[ブログ内リンク]
●ブログトップへ:
http://virtuallabmodelica.blog.jp/

[z_plusplusの他のブログへのリンク]
●地球の重力の井戸の底から:
http://zplusplus-anti-gravity.blog.jp/
a481420c
本ブログと異なり,テーマを絞らずに理工系に繋がる趣味記事をちょくちょく書いているブログです。どうぞお立寄り下さい。




ブログ移転の案内

この記事 でお知らせしたとおり、本ブログはブログサービス下での運営を止め、個人サーバー上のwebページに引越しします。livedoorブログが存続している限り本ブログは閉鎖せず残り続けますが、 この記事 以降の記事は総て こちらの新ブログ にて公開してゆきますので、これからもよろしくお願いします。

文献紹介

Modelica, Model-based degign

Modelicaによるシステムシミュレーション入門

入門者に最適の書。Modelicaって何?という導入から、簡単なコードベースやGUIベースの例モデルまで解説。筆者も入門時に手に取った。訳に少し癖が有る印象だが、英語書物がハードルになる方には確かな助けになる筈。


[amazon、紙面・電子]
[楽天、紙面書籍版] [AU payマーケット、紙面書籍版]
[honto、電子版] [楽天、電子書籍版] [AU payマーケット、電子書籍版] [7ネットショッピング、電子書籍版]

Introduction to Modeling and Simulation of Technical and Physical Systems with Modelica

「Modelicaによるシステムシミュレーション入門」の英語版原書。英語に抵抗がなければこちらを入手したら良いと思う。


[amazon、電子版・紙面版]
[Yahoo、紙面書籍版]

Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.3 A Cyber-Physical Approach (Wiley-IEEE Press)

本格的にModelicaを使い込むなら必携の書。辞書的に適宜調べものをするような形で手元に有ると頼もしい武器。量が多いので電子版もお勧め。筆者もKindle版を所有し、かなりの頻度で参照している。


[amazon、電子版・紙面版]
[楽天、電子書籍版]

はじめてのModelicaプログラミング -1日で読める わかる Modelica入門-


[amazon、紙面版]

Modelicaによるモデルベースシステム開発入門-ModelicaとFMIの活用による実践的モデルベース開発-


[amazon、電子版・紙面版]

Introduction to Physical Modeling With Modelica


[amazon、紙面版] [楽天、紙面書籍版]

Development of Modelica Library for Dynamics Simulation of CHP Plant: Modelica library structure design and modeling for transient simulation of Combined Heat and Power (CHP) plant


[amazon、紙面版]

Python

入門 Python 3


[amazon、紙面版]

かんたん Python


[honto、電子版]

スッキリわかるPython入門 (スッキリシリーズ)


[amazon、電子版・紙面版]

ゲームを作りながら楽しく学べるPythonプログラミング


[amazon, 紙面版・電子版] [honto、電子版]

流体力学(Fluid Mechanics)

Fundamentals of Fluid Mechanics


[amazon、紙面版] [Yahoo、紙面書籍版]

[amazon、紙面版]

[Yahoo、紙面書籍版]


熱力学(Thermodynamics), 熱機関(Engine, power system)

Fundamentals of Engineering Thermodynamics


[amazon, 紙面版]

Fundamentals of Jet Propulsion with Applications


[amazon、電子版・紙面版]
[amazon、紙面版]


航空力学/飛行力学(Aerodynamics/Flight Dynamics)

航空機の飛行力学と制御


[amazon, 紙面版]

Flight Stability and Automatic Control


[amazon, 紙面版]


------------------------------